大分市に「大分青少年科学館(仮称)」を!
2004年5月
大分に青少年科学館を作る会
[提案の趣旨]
21世紀の大分を支える子供たちのため、大分市に「大分青少年科学館(仮称)」を建設し、確かな科学的思考と豊かな感性に支えられた大分生まれの地球市民を創り出す。
1.現状
(1)全国の状況
○ 全国の人口40万人以上の都市41市(東京23区を除く)の内、いわゆる科学館に類する施設が設置されていない都市は4つしかない。(2003.10.1の推計人口による)
その内、西宮市(人口:456,037人)は神戸市、横須賀市(人口:430,436人)は横浜市、福山市(人口:406,182人)は広島市−岡山市の科学館が利用可能であり、大分市(人口:442,219人)のみが全国で唯一40万都市として科学館が利用できない都市となっている。
○ これを全国の県庁所在地でまとめてみると、全国47県庁所在都市の内、科学館が設置されていない都市は9つある。
その内、津市(三重県)、鳥取市(鳥取県)、松江市(島根県)、佐賀市(佐賀県)の4市は10万都市、水戸市(茨城県)、徳島市(徳島県)の2市は20万都市、奈良市(奈良県)、高知市(高知県)の2市は30万都市であり、大分市は科学館を持たない最大の県庁所在地ということになる。
○ 福岡県
福岡市立少年科学文化会館(福岡市)、
福岡県青少年科学館(久留米市)、北九州市立児童文化科学館(北九州市)、スペースワールド宇宙博物館(北九州市)等、都市部だけでも全国的に有名でレベルの高い科学館が数多く存在する。
○ 佐賀県
主なものは、佐賀県立宇宙科学館(武雄市)のみであるが、その内容は新しくかつ充実している。また佐賀市については福岡市の施設を利用できる。
○ 長崎県
○ 熊本県
熊本市立熊本博物館(熊本市)等の施設がある。
○ 宮崎県
宮崎科学技術館(宮崎市)があり、ここには建設当時としては世界最大のプラネタリウムがある。
○ 鹿児島県
鹿児島市立科学館(鹿児島市)等の施設がある。
※都市型の科学知識啓発施設を想定しているため、天文台のような観測施設は挙げていない。また、火山博物館、水の科学館のような単一分野の施設も挙げていない。
(3)大分県の状況
○ 単一分野施設として、大分県マリンカルチャーセンター(蒲江町)、うみたまご[大分マリーンパレス水族館](大分市)があるが、総合的な理科教育・啓発施設が存在しない。
2.「大分青少年科学館(仮称)」設置の理念
(1)大分の未来のために今なすべきこと
国にとって、町にとって極めて重要で大きな投資の一つが、教育です。大分はこれまで多くの先哲を輩出してきました。福沢諭吉、三浦梅園、広瀬淡窓等々、彼らはまた偉大な教育者でもありました。彼らの足跡に思いを馳せるとき、現在の我々は大分の子どもたちに何を伝え、残そうとしているのでしょうか? 我々は、大人自身が、自らの言葉で、直接子どもたちに話しかけているでしょうか? 子どもたちが、今、この瞬間、「大分の子どもで良かった!」と思うことができるでしょうか?
今こそ、我々おとなが、自ら子どもたちに、大分の未来を語るときです。
(2)県外に出た子どもたちが再び大分に戻ってくるように
例えば将来、偉大な科学者になった大分の子どもが、あるいは有名な技術者になった大分の子どもが、「今の自分があるのはふるさと大分のおかげ。子どもの時に見たあの科学館が今の自分を決めた」と言ってくれるでしょうか? ふるさとに大きな影響を受けたという思いのない子どもが、ふるさとが自分を育ててくれたという思いのない子どもが、大分に戻ってくれる訳がありません。彼らが、いつか大分に戻り、今度は自分がふるさとに恩返しをする番だ、と思ってくれるような思い出を作ってあげる必要があります。
(3)県都として大分県全体の文化向上に貢献すべき
大分市は東九州最大の都市として発展を続けていますが、同時に大分県の県庁所在地として、県内人口の1/3以上が集中する中核都市として他の市町村住民に対しても大きな影響力と責任があるものと考えます。大分県は上に述べたように県内に未だ科学館を持たない数少ない県です。現在、大規模施設の見直しを始めとする厳しい財政再建途上にある県庁に任せることができない以上、大分市に科学館建設の期待が寄せられるのは県民感情から言っても当然のことです。
(4)大分市としてのアイデンティティの確立を
これまでも大分市には特徴的な顔がない、との声が一部から上がっていました。確かに小ぎれいで、そつなくまとまってはいるが、何か心に訴えるもの、大分市の住民が一番大切に思っていることは何か、というものが伝わってこない、というのです。
だからこそ、夏の「府内戦紙」など新しい伝統を作っていこうとする活動が進められているのでしょう。しかし、このようなイベント駆動型のアイデンティティだけでなく、もう少し地道な活動が是非とも必要です。
全国で唯一宇宙発射基地の存在する九州、宇宙開発関連企業の集積する九州、そして新産業都市としての大分。これらを支え、優秀な人材を供給するために、地元の子どもに対する科学教育を他のどの地域よりも積極的に推し進めていく必要があります。そしてそのことが、21世紀の大分の新しいアイデンティティを産み出していくことにつながるのです。
3.「大分青少年科学館(仮称)」建設の方策
(1)県民の知恵を結集すべき
県都大分市に相応しい科学館を建設するためには、単に先進事例を模倣するだけでなく、少なくとも44万人、場合によっては121万人県民の知恵を結集し、利用することが大切です。
大分市内、大分県下には、大分天文協会、日本宇宙少年団おおいた分団、(特)大分宇宙科学協会を始めとする民間団体、大分大学、日本文理大学、大分高専、県立大分芸術短大等の大学・研究機関が存在するとともに、大分県理科・化学教育懇談会や「科学の祭典」の開催など、大分の教育・文化向上のための活動はこれまでも活発に行われています。
(2)市長部局と教育委員会が協調して活動を
科学館の主要な利用者が子どもである以上、教育委員会の関与が最も大きな要素になると思われますが、建設資金の調達方法を中心とした整備手法については市長部局との連携も求められます。
さらに、科学館を教育施設としてのみとらえるのではなく、市民の憩いの場、エンターテインメントの場としてもとらえるのなら、市役所として総合的な議論が必要になるものと考えられます。
4.「大分青少年科学館(仮称)」運営の方針
(1)教育委員会の全面的な参画を
科学館を青少年教育の二次的な施設と位置づけるのではなく、学校教育と同レベルの教育施設と認識し、教育委員会及び教職員の全面的な協力と参加を前提とする必要があります。例えば、科学館での活動を学校での授業の一部と位置づけ、全生徒の活動参加をカリキュラムとして組み込むことも考えられます。さらに、科学館のスタッフとして教職員を学校への異動と同等に扱い、配置することが必要となります。
(2)建設経費より運営経費を重視する
全国の科学館スタッフのミーティングで常に出てくる話題が、人材(学芸員)の不足と予算の不足です。教育施設である以上、最も重要な資産は人材であり、それを裏付ける運営予算であることをはっきりと認識し、長期的に安定した予算と人材を確保する必要があります。
(3)科学館の運営にも民間の知恵を
科学館を設置する際、民間の知恵を活用するように、その本来的な活動である運営事業にも民間の知恵を積極的に利用する必要があります。単に形式的に各界の代表を集めた評議委員会ではなく、教育に熱意を持ち、自らが知恵を出せる有識者による運営委員会や、科学館における民間指導員(ボランティア説明スタッフ)を充実させるなど、市民、県民の力を結集し、みんなで科学館を育てていくという姿勢が大切と考えます。
5.「大分青少年科学館(仮称)」の特徴
(1)子どもたちに夢を
教科書的な知識を与えるだけが教育ではありません。まず、科学に対する興味を、自然に対するセンス・オブ・ワンダー(驚きの心)を芽生えさせることこそ、科学館の最も大きな役割です。そのためには、科学館の建物そのもの、内装・施設そのものから子どもたちにアピールする必要があります。頭の中だけ、目先だけの啓発ではなく、子ども自身が夢の中に飛び込んでいるような空間を作り上げることが必要です。
(2)学校では味わえない知的興奮を子どもたちに
展示物、プレゼンテーションの内容が科学的にお粗末であったり、子供だましであったりしてはなりません。大人も納得するような本格的な内容こそ子どもたちに必要なのです。
そのためには、最先端の科学技術の紹介とともに、新産都企業等大分市内、県内の進出企業の積極的な協力も求める必要があります。
(3)子どもたちが参加できる施設を
ただ見るだけでなく、物にふれてイベントに参加できる施設である必要があります。そのためには、展示物だけでなく、科学教室や科学ショーのような行事を重視した運営を行うことが大切です。
(4)お金をかけるのではなく知恵をかける
資金に乏しくとも、工夫次第で楽しくためになる科学館は必ず実現可能です。要は努力と工夫をする熱意があるかどうかということではないでしょうか。その熱意を民間から引き出すことが重要なポイントと考えます。
END
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