V 明日の大分を築く心豊かな人づくり
1 多様な教育の推進と未来を拓く青少年の育成
【素案についての議論】
@ 「V 明日の大分を築く心豊かな人づくり」
と謳っていますが、そもそも「明日の大分を築く人づくり」とはどういう意味なのか、もう一度考え直してみる必
要があると思います。今後数十年の大分の未来を担う人材の育成という意味なら、今後10年を見据えた長期計画と
して、抜本的な人材育成のための取り組みを打ち出す必要があるのではないでしょうか。長期計画が担うべきは、
個々の戦術的議論ではなく、大分という郷土が今後の100年を託すべき人材をどのような哲学の下に育成するかとい
う戦略であるはずです。
かつて大分県において、16世紀に大友宗麟がキリシタン文化の華を咲かせ、西洋医学、西洋音楽などの先進文化 を持ち込みました。また、江戸時代から明治にかけて、三浦梅園、麻田剛立、広瀬淡窓、福沢諭吉などの学者・教 育者たちが、当時の最先端の科学や思想を日本に紹介し、あるいは生み出し、さらには数多くの後継者を育て上げ ています。 豊の国大分の先達たちが築いた教育立県、理系人材輩出の伝統は、地方自治が大きく変わろうとしている今こそ、 科学・技術と、環境・人間性の調和が強く求められている21世紀にこそ蘇るべきです。 理科系・技術系の人材育成を戦略として明確に打ち出すことにより、新世紀の長期計画として前世紀の計画との明 確な差別化が図れるものと考えます。 (4)生涯学習社会の形成と社会教育の推進
A 「これからの基本方向」として「図書
館・博物館などの社会教育施設における学習機会の充実」が挙げられていますが、「主な取り組み」の「@生涯
学習推進基盤の整備」の中には、具体的に博物館など(科学館を含む)の整備が挙げられていません。
[科学・技術啓発施設の整備状況]
(2003.10.1の推計人口による)
上記の現状を考慮に入れた場合、本県の置かれ
ている現状とこれからの方向性に整合が取れていないと言えます。
「主な取り組み」に掲げられた事項は、情報提供や既存施設の活用といった2次的な方策が中心であり、生涯 教育のための情報発信施設の設置という第1次的な施策が長期計画として求められていると考えます。 3 多彩な県民文化・県民総スポーツの振興
(1)県民文化の創造
【素案についての議論】
@ 「3 多彩な県民文化」とありますが、
新長計素案の内容を見る限り、いわゆる文系の文化だけが論じられており、理系の文化が完全に欠落しています。
文化に対する認識が一面的に過ぎるのではないでしょうか?
先に触れたように、大分県には大友宗麟以来の進取の気性、理系文化の大いなる伝統があるはずです。 [参考資料:大分の教育・文化の歴史と現状] A 大分県は、新産業都市計画、テクノポリ
ス計画以来、理系企業誘致に向けて頭脳立県、人材立県を標榜して来ました。この伝統を堅持するとともに、テクノ
アイランド九州の東の玄関として21世紀の基本戦略を何に求めるべきか、新長計できちんと議論する必要があるので
はないでしょうか。
[参考資料:大分の地域特性・施策の歴史と現状] B 県民アンケート調査結果によれば、「日
常生活を送る中で感じていることについて」で「文化施設の整備状況」に関して56.4%の人が「良い」または「普通
」と回答しています。しかしながら、この結果をもって、大分県における文化施設の整備が十分であると結論づける
のは早計であると考えます。なぜならば、今、我々が議論しているのは、現在の大分県民が知らない文化施設、文化
施策の必要性についてであるからです。文化政策の分野においてこそ、日常生活に埋没しながらも夢を求めようとす
る人々に、文化の光を高く掲げ照らす理想が必要です。また、先に述べた科学館整備状況の全国と本県との比較を見
れば、56.4%という数字が、外の世界を知らないからに外ならないというのは明らかです。
【新たな提案】
@ 過疎と経済不振に悩む県として、本気で
取り組むべきは、明確な哲学と長期的な視野に立った人材育成であり、これこそが抜本的な解決を導くことを宣言す
る必要があります。
A ここ数十年間の大分県の施策展開と現状
を考えれば、優秀な理系人材の育成と、幅広い市民層の科学技術への理解の拡大を積極的に図っていく必要がありま
す。
B そのためには、住民・教育現場・企業・
大学等アカデミズム・行政が、本当の意味でコラボレーション(協働)する仕組みを作り上げることが大切です。
[参考資料:大分青少年科学館と民・産・学・官のコラボレーション] C その全県的市民運動の中核的・活動拠点
として、現在、大分に未整備の科学館を建設することを強く提案します。
以上
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